「私、冷え性なんです」や「私は暑がりだから冷えてはいないかな」のような会話をすることって女性は特にありますよね。「冷え性」や「冷え」、よく使う言葉ですが、一体どういう状態を冷えととらえ、冷え性とは何なのでしょうか?
◾️冷え性とは
冷え性とは、身体の特定の部分だけが冷たく感じるものをいい、思春期や更年期の女性に多く見られます。「手足が冷たい」や「下半身が冷える」、「足が寒くて眠れない」のような冷えの症状以外に「頭痛」や「肩こり」、「生理痛が重い」や「下痢」、「疲れやすい」などの随伴(ずいはん)症状も人によっては見られます。
冷え性のタイプごとにあらわれやすい症状も違いますので、冷えのタイプを見ていってみましょう。
◾️何をもって冷えととらえるのか?
例えば「体温が平熱36.5ある人」は冷え性ではないのでしょうか? 冷えにより体温が低体温になる場合もありますが体温は変わらず体の表面だけ冷えたり体の一部のみ冷えるケースもあります。
では、「寒がりの人は冷え性で暑がりの人は冷え性ではない」のでしょうか?
暑がりの方でも、頭や顔はあついけど、下半身は冷たいということもよくあります。
タイプ別冷え性
冷え性といっても一つではなくいくつかのタイプがあります。
- 手足末端冷えタイプ
- 下半身冷えタイプ(冷えのぼせパターンもあり)
- 内臓(お腹冷え)タイプ
- 全身冷えタイプ
手足足先が冷える手足末端冷えタイプ
食事の量が少なく栄養が足りないので、体の中の血やエネルギーが足りないため熱を十分に作り出すことができないタイプです。また運動不足で筋肉も少なく体の末端まで血液を十分に巡らすことができないため手足の末端が冷えてしまいます。若い女性や細身の体型の人に多いです。
- 手足末端タイプの傾向
・手先足先が冷たい
・ダイエットをしている
・貧血と言われたことがある
・月経トラブルがある
対策としてしっかり食事をとること、運動することが大事になります。
鍼灸で対策する場合、手先足先にあるツボを使うことによって末端の血流が良くなります。
下半身が冷える下半身冷えタイプ(下半身は冷たくて上半身は熱い冷えのぼせタイプも)
足先というより、ふくらはぎや太ももやお尻を触ってみて冷たいのが下半身冷えタイプです。加齢や運動不足により下半身の筋肉量が少ない等の理由で、下半身の血液循環が弱くなり冷えを起こします。
また上半身は普通の温度もしくはのぼせ傾向で暑がりだったりもします。
「『暑い暑い』と顔の周りをパタパタあおいでいても足は冷えている」と言う冷えのぼせの方も多いですね。
- 下半身冷えタイプの傾向
・下半身(ふくらはぎ、太もも、お尻)が冷たい
・デスクワークであまり体を動かさない
・足がむくみやすい
・太ももやお尻のセルライトが気になる
このタイプは更年期の女性に多いのですが、加齢や運動不足により下半身の筋肉が凝り固まってしまい下半身の血流が悪くなり冷えを招きます。
対策として、下半身を冷やさないようにすることや運動やストレッチを行い、血流の改善をはかることが大事です。
お腹が冷えている内臓冷えタイプ
手足に冷えはないけれどお腹をさわると冷たいタイプです。服で保護されており、体の中心部であり、本来温かいはずのお腹が冷えています。このタイプは手足の冷えより自分では気づきにくいので気になる方は手足とお腹を触ってみてあたたかさを確かめてみてくださいね。
薄着が多い方や冷たいものを好みよく食べる方、また過去に腹部の手術をしている方にもみられます。消化器系統が冷えることによって消化吸収がうまく行われず、腹痛や腹部膨満感、下痢を起こしたりします。
- 内臓冷えタイプの傾向
・お腹が冷たい
・冷たいもの(食事、水分)をよくとる
・下痢や軟便傾向
対策として、お腹を冷やさない服装をするや冷たい飲食物を避け、消化しやすいものを食べるようにすることが大事です。またお風呂がシャワー派の人もこのタイプに多いので湯船に浸かるようにしてお腹を温めてあげましょう。腹巻をするのもいいですよ。
全身冷えタイプ
どこもかしこも冷たい全身冷えタイプ、このタイプの方は慢性的な過労や栄養不足、または加齢により基礎代謝が低下しており、体の中も外も冷えている状態です。
老化や栄養不足、病後の体力低下や過労、甲状腺機能の低下により体のエネルギーが足りず熱を作れないことによって起こります。
- 全身冷えタイプの傾向
・全身に冷えを感じる
・体温が35度台である
・少し動くと疲れてしまう
・食欲がなく気力もない
対策として、しっかり食事をとること、基礎代謝を上げていくことが大事になります。
栄養があり消化に良いものを意識して食べていきましょう。基礎代謝を上げるのに筋肉量も必要なので運動も大切なのですが、エネルギーが足りない状態で激しい運動をするのは逆効果になります。ウォーキングやストレッチのような軽い運動から行なっていきましょう。くれぐれも無理は禁物ですよ。
食べ物で冷え対策
次に冷え性の方はどんなものを食べるのが良いのでしょう?
冷えに使う食材で一般的によく知られているのが「生姜」ですね。
生姜は消化促進や血行を良くし、体を温める効果があるので冷えに効果のある食材です。
漢方医学でも、昔から生姜は冷えに対して使われており、漢方薬に使う生薬として使用されています。
冷え対策として使う場合、生姜は加熱すると成分が代わるので、体を温めたい場合は加熱した生姜を使ってくださいね。
生姜だけではなく、薬膳で考えると食材には体を温める性質のものと冷やす性質のものがあります。冷えがある方は温める性質のものを意識してとり、逆に冷やす性質のものを控えることが大事です。
(参考)
- 体を温める食べ物:海老、鮭、鰤、羊、鶏肉、にら、にんにく、生姜など
- 体を冷やす食べ物:かに、ハトムギ、きゅうり、トマト、バナナ、柿など
特にこれからの暑くなる季節は夏野菜をサラダで食べる方も多いと思いますが、夏野菜は体を冷やす性質のものが多く、それをサラダのような冷たい状態で食べるとますます体を冷やしてしまうので気をつけてください。
また体を温める性質のもの以外に冷えの場合は、血(けつ)を養ってくれる食べ物(カツオやぶり、マグロなど)、胃腸に良い食べ物(お米やかぼちゃなど)、腎(じん)に良い食べ物(長芋、エビなど)も意識して摂り入れると良いと思います。
冷えに効果的なツボ
鍼灸で冷え性を治療する場合、冷えている場所にハリやお灸を行うことで刺激し、血流を良くすることができます。(ただ鍼灸は直接的に局所を刺激するだけではなくその方の体質に合わせてツボを決め、不調を治していくので冷えがある箇所だけを治療する訳ではありません。)
- 手足末端冷えタイプ:手先足先のツボを使うことによって末端部分の血の巡りをよくします。足の指先の付け根にある八風((はっぷう)や足の裏にある湧泉(ゆうせん)等。
- 下半身冷えタイプ:下半身の筋肉が凝り固まり、血流を悪くしているので腰や仙骨部、足にあるツボを使って血流をよくします。腎兪(じんゆ)や志室(ししつ)、環跳(かんちょう)など
- お腹冷えタイプ:お腹が冷えているので、お腹にあるツボや仙骨付近のツボを使うことによって内臓を温めていきます。おへそから少し下にある関元(かんげん)や仙骨にある次髎(じりょう)など
- 全身冷えタイプ:全身が冷えているので、その時の状態に合わせて背中にある兪穴(ゆけつ)やお腹にある関元(かんげん)、胃腸の機能を高める足三里(あしさんり)など
冷え性の場合は、熱を加えられるお灸をするのが効果的ですね。
お灸はセルフケアとして自分でできるものも売られているのでお家でご自身で出来るようになると便利ですし体質改善に役立ちます。冷えにお悩みの方は一度お試ししてみてくださいね。
(鍼灸師、国際薬膳調理師:岡 麻由美)